世界的な半導体需要の急拡大により、2021年は5529億6100万米ドル(前年比25.6%の大幅成長)となる見込みの半導体市場。
各国政府も半導体の生産能力強化に次々と投資を発表し、2030年には1兆ドルまで市場規模の拡大が見込まれています。
確実性の高い成長市場であることから投資家からの注目度も高く、人気の株式テーマランキングでは常に上位にランクイン。
一言で半導体関連と言っても、半導体製造装置・パワー半導体・半導体材料・EUV(露光装置)・半導体メモリ・半導体メーカーなど業種は多岐にわたり、関連企業はたくさんあります。
中でも、今後の高い株価上昇の余地を見込む、半導体銘柄の本命を日本株とアメリカ株からそれぞれ厳選しました。
目次
半導体関連銘柄の本命6選
半導体関連テーマの本命株として選んだ6銘柄は次の通りです。
- TOWA(6315)
- ザインエレクトロニクス(6769)
- 内外テック(3374)
- エヌビディア(NVDA)
- TSMC(TSM)
- ASML(ASML)
日本の半導体関連企業は世界の中でも競争力が高く、世界トップシェアを誇る製品を持つ会社もあります。
世界シェアの高い製品は市場全体の拡大とともに必然的に需要が増えるため、業績成長の可能性が高く株価も伸びやすいです。
また、米国株には世界100%のシェアを誇る最先端製品を提供している会社があり圧倒的な地位を築いています。
この記事では既に半導体市場をけん引する存在であり、競合と比べても高い成長率で伸び続けている企業を選抜しました。
それぞれ詳しく事業内容や半導体テーマとの関連性、そして今後の成長性を解説します。
※記事内で使用しているチャートは2020年1月~2021年12月3日までの期間です。
日本株3選
まず注目したいのは、半導体製造工程の1つで使われるモールディング装置の世界トップシェアを誇るTOWA株式会社です。
本命株①:TOWA(6315)
TOWA(6315)
株価:3,200円
市場:東証一部
時価総額:約800億円
業種:機械
TOWAは中国に半導体製造装置の生産拠点を持つ、半導体後工程用製造装置の大手です。
半導体製造の1工程であるモールディング装置において、全自動化したモールディング金型・装置を世界で初めて提供し、以降世界のトップシェアを誇っています。
半導体需要の増加に伴い、同社のモールディング装置に関する引き合いが強くなっており、22年3月期の連結業績予想では、売上高前期比54.9%増、営業利益前期比2.5倍、純利益を前期比2.4倍としています。
出典:SmartChartPLUS「TOWA(6315)」
このモールディング装置の引き合いは今後も高い受注水準が継続する見通しです。
本命株②:ザインエレクトロニクス(6769)
株価:1,064円
市場:東証JQS
時価総額:約131憶円
業種:電気機器
次にご紹介するのは半導体を含む大規模集積回路「LSI」で世界トップシェアを持つ製品を持つザインエレクトロニクス株式会社です。
工場を持たないファブレス経営で生産や組み立てを外注で進めており、コストを抑えて利益を伸ばせるビジネスモデルが強みです。
半導体装置の世界大手、東京エレクトロングループ向けの製品が多いのが特徴です。
東京エレクトロン関連の材料につられてストップ高になることもしばしばあります。
出典:SmartChartPLUS「ザインエレクトロニクス(6769)」
成長トレンドにある産業機器分野向けLSI出荷やEV化が進む中国車載市場の拡大を受けた高速情報伝送用LSI製品の出荷が順調に伸びています。
また今後も5GやAI・IoT、電気自動車(EV)など成長分野に照準を合わせた中期戦略を進めていて中長期的に成長を遂げていくことが予想されます。
本命株③:内外テック(3374)
株価:3,275円
市場:東証JQS
時価総額:約116億円
業種:卸売業
最後にご紹介する日本株の半導体関連本命株は内外テック株式会社。
半導体関連装置の製造に必要な機器の仕入れ販売や受託製造を手掛ける専門商社です。
半導体関連装置を中心に各種機械装置の製造に欠かせない、空気圧機器をはじめとする多種多様な機器や機械部品を取り扱っています。
半導体装置の世界大手、東京エレクトロングループとの取引関係が厚く、収益環境は今後も含めて良好とされ、株価も右肩上がりに伸びています。
出典:SmartChartPLUS「内外テック(3374)」
企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)投資の加速に伴うIT機器需要や5Gの商業サービス本格化に伴う需要拡大で、今後の業績にも期待が持てます。
22年3月期の純利益予想では前期比54.2%増の11億4,600万円になる見通しを発表し、株価は窓を開けて急騰したばかりです。
今後も好調な業績推移による株価の上昇トレンド継続が見込まれます。
米国株3選
次にアメリカの半導体関連銘柄の本命3つです。
本命株④:エヌビディア(NVDA)
株価:333.76ドル
市場:NASDAQ
時価総額:8325億ドル
業種:IT・通信
関連性:半導体の1種類で、画像処理に特化した半導体「GPU」の世界シェア20%
エヌビディア(NVDA)はコンピュータのグラフィックス処理を行うGPUを開発し、ビジュアルコンピューティング技術を提供、PC向けグラフィックプロセッサとメモリ製品を販売しています。
エヌビディアのGPUは世界シェアの20%を占めています。
GPUはCG処理だけでなく、AI開発でも活用されており、GPUを必要とするAI技術とともに近年注目が高まっています。
エヌビディアのGPUは高速で膨大な量の演算処理ができるため、EVやAI、ディープラーニング等の技術に利用されるなど、GPUを汎用コンピューティング向けに活用するための並列演算用開発プラットフォームを提供しています。
出典:TradingView「NVDA」
また21年4月には、データセンター向けCPUを発表し、23年頃には米欧のスーパーコンピューターに搭載される見通しとのことです。
このCPUは従来の10倍以上の処理速度を実現されるといわれ、投資家からの期待も高まっています。
本命株⑤:TSMC(TSM)
株価:119.28ドル
市場:NYSE
時価総額:約6186億ドル
業種:IT・通信
関連性:半導体メーカー世界3位
TSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング, TSM)は、台湾に本社をおく世界的な半導体メーカーです。
PC、自動車、産業機器メーカー等に対して、半導体の開発、設計を行っています。
TSMCの時価総額は世界11位。
半導体チップの製造を専門に行っており、アップルを筆頭にAMD、メディアテック、インテルなど世界各国の半導体サプライヤから受注しています。
また20年の売上は455億ドルに達し、前年比の増加は31.4%。半導体市場全体が前年比10%増で拡大しているのと比べても非常に成長している企業といえます。
出典:TradingView「TSM」
2024年にはソニーと共同で日本の熊本県に8,000億円規模を投じて半導体製造工場の建設を予定しており、今後の生産力工場による業績拡大に期待ができます。
本命株⑥:ASML(ASML)
株価:815.01ドル
市場:NASDAQ
時価総額:約3371億ドル
業種:IT・通信
関連性:半導体用露光装置世界トップシェア、EUV世界シェア100%
ASML(ASML)は半導体用露光装置、検査装置の開発、製造、販売を行っています。
世界中の主な半導体メーカーの80%以上がASMLの顧客という、半導体露光装置において非常に高いシェアを誇っています。
また、半導体の高性能化に不可欠と言われているEUV露光装置で、ASMLは世界唯一のEUV露光装置メーカーでもあります。
1台250億円ともいわれるEUV露光装置については、ASMLが世界シェア100%を占めています。
出典:TradingView「ASML」
さらに先日、23年前半の実用化に向けて、新しいEUVリソグラフィ装置の開発計画も発表しており、このリソグラフィツールは世界最先端の半導体市場において非常に重要な存在となっています。
新製品も変わらず高い需要が見込まれ、右肩上がりの株価チャート継続に期待が持てます。
※株価は全て2021/11/29(現地時間)もしくは30(日本時間)の終値です。
半導体に関連するテーマ6分野
そもそもよく耳にする半導体とは何なのでしょうか。
実物を目にする機会もほとんどないため、実はよくわからないという方も多いのではないかと思います。
半導体とは、電気を通す「導体」と電気を通さない「絶縁体」の中間に位置する物質です。
温度などの一定の条件下で電気を通しやすくなり、この仕組みを利用して電気製品の制御を担うことができます。
PCやスマホ、家電や医療機器、自動車などあらゆるものに搭載されるとともに、電気やガス、水道、電車の運行システムなど社会インフラの制御にも使われています。
ここでは半導体製造のより詳しい工程とそれぞれの工程を担う技術や部品に注目したさらに細かい関連テーマを6つご紹介していきます。
- 半導体製造装置
- シリコンウェハー
- パワー半導体
- EUV
- 半導体材料
- 次世代パワー半導体
半導体製造装置
半導体製造装置(SPE)とは、半導体デバイスの製造をするための装置のことをいいます。
半導体はナノメートル単位での精度を要求されるため手作業での製造は難しく、製造装置が使われています。
半導体の製造工程は、主に3つのパートに分かれています。
- 設計:性能を満たすための回路の設計
- 前工程:原料に回路を焼き付ける工程
- 後工程:回路が載った原料を切り出し、検査する工程
半導体関連銘柄で有名な東京エレクトロン(8035)やレーザーテック(6920)などはこの設計および前工程。
アドバンテスト(6857)やディスコ(6164)は後工程に関連する企業になります。
シリコンウェハー
シリコンウェハーとは、半導体の製造に欠かせない材料になります。
表面を鏡面に磨き上げ、世界中のあらゆる物質の中で最も高い平坦度を誇る超平坦、清浄な円板を作ります。
最先端の半導体にはこの高度な技術が必要な最高品質のシリコンウェハーが使われます。
2020年のシリコンウェハー市場は、信越化学工業(4063)31.4%、SUMCO(3426)24.4%の2社で世界市場全体の半分以上のシェアを占めており、日本企業の独壇場です。
2021年時点の日本市場における半導体関連銘柄では半導体製造装置とシリコンウェハーを手掛けている銘柄が主力の注目テーマとなっています。
パワー半導体
パワー半導体とは高い電圧、大きな電流を扱うことができる半導体で、パワーデバイスとも呼ばれています。
大出力モーターの動力に対応しているため、主力分野は産業機器ですが、最近では自動運転、センシング技術など自動車向けで需要が伸びています。
実際、世界的に需要が増加していて半導体の生産が追いつかず、自動車生産が停止するということも起きています。
今後については電気自動車(EV)向けで、世界中で飛躍的に需要が伸びることが予想されています。
さらにパワー半導体は高度な技術を必要とし、多品種少量生産という特徴を持つことから参入へのハードルが高い分野です。
そのため、半導体全体の市場では上位の米韓国や中国も容易に台頭できない分野として、日本の半導体成長幅の軸とおいています。
この分野で強い関連銘柄は三菱電機(6503)、富士電機(6504)などです。
EUV
EUV(極端紫外線)は、半導体の微細化技術で用いられる光の一種になります。
EUV露光装置そのものは、オランダのASMLが独占していますが、露光装置とセットで使われる製造装置や検査装置、そして部材については日本メーカーが高いシェアを持っています。
5Gの普及を追い風に、半導体の微細化のニーズが高まっており、半導体メーカーはEUV導入を加速しています。
しかし現段階での最先端のEUV露光装置や周辺装置は非常に高額で、出来上がりの半導体の適性売価が原価を上回ることを想定されており、どこまで追求するかの見極めも必要といわれています。
EUV(極端紫外線)の注目銘柄は、EUV向けコータ・デベロッパ(塗布現像装置)でシェア100%を誇る東京エレクトロン(8035)やEUV露光計測装置を手掛けるキヤノン(7751)です。
半導体材料
半導体にはシリコンウェハーの他、半導体の表面に画像層のパターンを形成することに使用される半導体用のレジストやエッチング工程のエッチングガスなど、様々な材料が使われています。
これらの材料の日本企業のシェアは5割に達するとも言われています。
注目銘柄は、フォトレジストやトップコート材料、低温硬化絶縁膜といった半導体材料で世界ナンバー1のシェアを有しているJSR(4185)や半導体向け感光材で世界トップシェアを誇る東洋合成工業(4970)があります。
次世代パワー半導体
次世代パワー半導体とはGaNパワー半導体とSiCパワー半導体を指します。
現在のシリコンを材料とした半導体製品は、素材特性の物理的な制約により、特性の改善が限界に近づいてきています。
そこで、そのシリコンにかわって注目されているのが、「SiC(エスアイシー・シリコンカーバイド・炭化ケイ素)」や「GaN(ガン・ガリウムナイトライド・窒化ガリウム)」といった化合物の材料です。
これらの素材は、素材そのものの性能指数で比較すると、SiCは440倍、GaNは1130倍と桁違いの高性能を誇ります。
現在、これらの素材の量産化、商用化が進められており、シリコン半導体からこれらの化合物半導体へ置き換えることで、電子機器のさらなる小型化や軽量化が期待できます。
実際、現在はSiCパワー半導体に続きGaNパワー半導体も市場への浸透が始まっています。
それぞれの特性として、SiCデバイスはモーター駆動などの高耐圧・大電流用途、GaNデバイスはスイッチング電源などの小型・高周波用途で有利とされています。
これらの材料の注目銘柄は、SiCパワー半導体及びGaNパワー半導体両方を手掛けるサンケン電気(6707)やSiCパワー半導体で世界首位を目指すローム(6963)などがあります。
半導体銘柄の今後の展望と期待性
半導体銘柄は、今後各国政府のバックアップを受けながらさらに成長していくと思われます。
例えば日本。
先日11月15日に行われた「第4回 半導体・デジタル産業戦略検討会議」では、具体的な戦略にいても言及していました。
ここではその具体的な戦略や支援の規模についてもみていきましょう。
2020年時点では、50兆円規模の半導体市場の約7割(35兆円)がPC、スマホ、データセンターが占めています。
これから2030年に向けて市場規模が100兆円へ拡大していくにあたり、これらの用途は約6割(60兆円)に縮小する一方、産業用や自動車(EV)、スマート家電等などの分野が約3割(30兆円)伸びていきます。
出典:経済産業省「半導体戦略の進捗と今後」
既にスマホ、PC、DC、5Gインフラに使われるロジックとメモリはアメリカや韓国が市場を席捲しているため、日本では国を挙げての競争戦略として、新たな半導体需要の成長が見込まれている自動運転やFA(工場における自動化)など産業用半導体への参入をチャンスととらえています。
出典:経済産業省「半導体戦略の進捗と今後」
そして経済産業省では、先日11月15日、「第4回 半導体・デジタル産業戦略検討会議」にて半導体産業基盤緊急強化の実行計画を示打ち出し、国の事業としてアクションを起こしていく姿勢を示しました。
これらは、企業に対する助成金規模の政策ではなく、複数省庁の協力体制を得ながら国全体で産業の発展に向けて取り組む内容となっています。
半導体業界では、国策として日本政府が支援する案件が増えてくることが予想されます。それに伴い、株式市場でも半導体関連銘柄に注目が集まることも増えてくるでしょう。
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