移動平均線とは、基本中の基本ながら必ずと言っていいほどプロのトレーダーにも活用されているチャート分析の指標です。
移動平均線が使えるようになるだけで様々な手法に応用でき、トレードの根拠に信頼性が増すため勝率や利益アップに期待ができます。
株やFX、先物取引、仮想通貨(暗号資産)など様々な金融商品のトレーダーに世界中で愛用されている移動平均線。
線の向きや角度、ローソク足との位置関係などで値動きの傾向を捉える移動平均線の見方や使い方を早速見ていきましょう。
目次
移動平均線とは相場の流れを捉える指標
移動平均線とは大まかな相場の流れを捉えるテクニカル指標(チャート分析指標)の1つです。
一定期間の価格の平均値を線でつないだ折れ線グラフでできています。
出典:TradingView「トヨタ自動車(7203)」
例えば、25日移動平均線の場合、その日から25日分さかのぼった終値の平均価格を日々算出し、その平均値を線でつなぎます。
※終値:1本のローソク足が示す期間の最後についた価格
平均値は常に最新の価格が計算されて移動するため「移動平均」と呼ばれています。
また様々なテクニカル指標が移動平均線をベースに作られているため、移動平均線は多くのトレーダーに注目され、意識されている指標になります。
多くの人が意識していることで、それを根拠にトレードする取引量が増え、より強力なトレード根拠として成り立ちます。
このように移動平均線とは、トレンドの方向を表すだけでなく、投資家の心理にも影響を与え、相場を動かす要因となっています。
移動平均線の見方
移動平均線はチャートに表示しているローソク足の単位と本数によって見方が変わります。
例えば25期間の移動平均線を日足チャートで表示した場合は「25日移動平均線」となり、1時間足チャートで表示すると「25時間移動平均線」、1分足チャートで表示すると「25分移動平均線」となります。
自分のトレードスタイルによって見るチャートを変えましょう。
デイトレードなら1時間足や15分足チャート、スイングトレードなら日足や4時間足チャートのようになります。
移動平均線の考え方
移動平均線はその向きや角度、本数やローソク足との位置関係によって読み取れる内容が変わってきます。
ここではそれぞれの内容について解説します。
移動平均線の向き=トレンドの方向性
移動平均線はその向きでトレンドの方向性を確認することができます。
どの金融商品でも相場は上昇トレンド、下降トレンド、レンジ相場と、大きく3つに分けることができます。
移動平均線が上向きの場合は上昇トレンド、下向きの場合は下降トレンド、方向感がなく平行の場合はレンジ相場といえます。
出典:TradingView「米ドル/円チャート」
移動平均線の角度=トレンドの強弱
移動平均線は角度によって、トレンドの強弱を確認することができます。
移動平均線の角度が急であればそのトレンドは強く、角度が緩やかになれば、トレンドが弱いことがわかります。
出典:TradingView「米ドル/円チャート」
移動平均線とローソク足の位置関係
移動平均線を基準にした場合のローソク足の位置によってもトレンドの方向を確認できます。
移動平均線の上にローソク足がある場合は上昇トレンド、下にある場合は下降トレンドとなります。
出典:TradingView「米ドル/円チャート」
また、移動平均線と価格の乖離率の大小によって、現在の相場が売られすぎなのか、買われすぎなのかも分かります。
一般的に、5日移動平均線で10%、25日移動平均線で15~20%以上離れると、移動平均線に収れんする(近づく)傾向があると言われています。
出典:TradingView「米ドル/円チャート」
移動平均線と価格の乖離率を確認し、移動平均線に近づこうとするタイミングを狙って取引をすることもできるでしょう。
移動平均線の短期、中期、長期線の組み合わせ
短期、中期、長期それぞれの移動平均線を3本同時に表示させることで、よりトレンドの判断を付けやすくなります。
3本の移動平均線が同じ方向を向いている場合は、その方向に強いトレンドができている状態です。
出典:TradingView「米ドル/円チャート」
上から順位に短期>中期>長期の順に並んでいれば上昇トレンド、逆に長期>中期>短期の順に並んでいる場合は下降トレンドです。
複数の移動平均線が同じ方向を向いている状態をパーフェクトオーダーと呼び、上級トレーダーに至るまで多くの人に意識されるチャートパターンです。
またこの3本が複雑に絡み合っている場合、相場に方向感がないレンジ相場といえます。
移動平均線のおすすめ期間設定
移動平均線のおすすめの期間設定は長期投資やデイトレード、スキャルピングなどトレードスタイルによって異なります。
大切なのは多くのトレーダーが使っている期間を選ぶことです。
なぜなら、相場は投資家心理によって動いているため、より多くのトレーダーが見ている期間ほど投資家心理を反映し、機能しやすいからです。
年単位の長期投資の場合
長期投資では日足チャートで200日移動平均線が広く使われています。
長期投資とは年単位でのトレードになります。
よって長期投資の場合は、テクニカルでエントリーポイントを判断するというよりファンダメンタルをより重視します。
その上で長期的なトレンドの把握のために、200日移動平均線や100日移動平均線がよく使われています。
数日~数週間のスイングトレードの場合
スイングトレードでは日足チャートの20日移動平均線と75日移動平均線でトレンドの方向性を掴む設定がおすすめです。
スイングトレードとは、1度の取引につき数日から数週間かけて売買を行い、損益を確定する中長期のトレード手法になります。
日中忙しい会社員や専業主婦の方でもゆったりとしたトレードで利益を狙えるため人気があります。
数時間単位のデイトレードの場合
デイトレードでは1時間足チャートの20期間移動平均線でトレンドの流れを把握し、15分足の75期間移動平均線でエントリーのタイミングを計るのがおすすめです。
デイトレードとは、買った(売った)その日のうちに売買を完結させる、短期のトレード手法のことをいいます。
損失を翌日に持ち越さないことから突発的な相場変動の影響を受けにくく、FXトレードでは人気のあるトレードスタイルです。
移動平均線を使った手法
移動平均線を使ったトレード手法を3つご紹介します。
- ゴールデンクロスとデッドクロス
- 移動平均線乖離率
- グランビルの法則
3つとも株式投資やFXなどさまざまなトレード対象に使える手法で、シンプルながら信頼性が高く多くの人に活用されています。
ゴールデンクロスとデッドクロス
ゴールデンクロスとは、短期の移動平均線が中期の移動平均線を上に抜けて交差している状態を指し、一般的に上昇トレンドが始まり、買いシグナルとして見ることができるものです。
この場合、上へ突き抜ける角度が重要で、強い角度で下から上へ突き抜けた場合はより信頼性の高いものになります。
出典:TradingView「トヨタ自動車(7203)」
反対にデッドクロスとは、短期の移動平均線が中期の移動平均線を下に抜けて交差している状態を指し、一般的に下降トレンドが始まり、売りシグナルとして見ることができるものです。
この場合も下へ突き抜ける角度が重要で、強い角度で上から下へ突き抜けた場合はより信頼性の高いものになります。
出典:TradingView「トヨタ自動車(7203)」
これらのサインを見る時間軸は、日足であれば、5日線と25日線、週足であれば13週と26週の移動平均線がよく使われています。
ただし、価格が一定の価格帯を行き来しているボックス相場では、ゴールデンクロス(デッドクロス)が出てもすぐに下がる(上がる)ことが多く、シグナルとして有効にはたらかないので注意が必要です。
また一般的に、移動平均線のクロスだけでは「だまし」も多く信頼性に乏しいため、MACDやRSIなど他のインジゲーターも合わせて見るとよいとされています。
移動平均線乖離率
移動平均線乖離率とは現在の相場が買われすぎか売られすぎかを示す数値です。
移動平均線と現在価格がどれだけ乖離しているかをパーセンテージで表します。
一般的に、5日移動平均線で10%、25日移動平均線で15~20%以上離れると、値動きが収縮し、移動平均線に近づこうとすると言われています。
移動平均線を軸に価格が大きく上に乖離(プラス乖離)しているほど「買われすぎ」、大きく下に乖離(マイナス乖離)しているほど「売られすぎ」となります。
「買われすぎ」はその後下落のサイン、「売られすぎ」はその後上昇のサインです。
乖離率は、以下の計算式で求めることができます。
乖離率(%)=(当日の終値-移動平均線の値)÷ 移動平均線の値 × 100
また証券会社のスクリーニング機能やYahoo!ファイナンス等のサイトを使うと、移動平均線乖離率でスクリーニングすることができます。
しかし、この移動平均線からの乖離率を使ったトレードをする場合は、注意すべき点があります。
それは、乖離率が高くてもすぐに反発するとは限らないということです。
大きなトレンドにのっている場合、そちらにひっぱられてしまい、なかなか価格が戻ってこないケースがあります。
また株取引の場合は、その銘柄に上場廃止リスクや倒産リスクをはらんでいることもあるので注意が必要です。
あらかじめ値動きを意識した上でエントリーをし、その通り動かない時は損切をするなどリスク管理はしっかりと行うことをおすすめします。
グランビルの法則
グランビルの法則とは、移動平均線を使用した8つの相場の原理原則です。
具体的には、価格と移動平均線の組み合わせや位置によって、売買のタイミングを判断するものです。
買いパターン4つ
出典:TradingView「米ドル/円チャート」
【買いタイミング(1)】
<ポイント>
下降トレンドから上昇トレンドに転換したタイミングです。下降トレンドが長期間続いた後のこのタイミングは底値圏での買いポイントとなります。
<移動平均線>
下落 → 横ばい~上向きに転じた時
<価格>
移動平均線を下から上に突き抜けた時
【買いタイミング(2)】
<ポイント>
上昇トレンドの中の押し目買いのタイミングとなります。
<移動平均線>
上向きの時
<価格>
一旦下落し移動平均線を下回るが再度上昇し、移動平均線を下から上に突き抜けた時
【買いタイミング(3)】
<ポイント>
上昇トレンドの中の押し目買いや買い増しのタイミングとなります。
<移動平均線>
上向きの時
<価格>
一旦下落するが、移動平均線の手前で再度上昇した時
【買いタイミング(4)】
<ポイント>
移動平均線からの乖離率を利用したリバウンド狙いのタイミングになります。
<移動平均線>
下向きの時
<価格>
移動平均線の下に大きく乖離した時
売りパターン4つ
出典:TradingView「米ドル/円チャート」
【売りタイミング(1)】
<ポイント>
上昇トレンドから下降トレンドに転換したタイミングです。ポジションがある場合は、重要な利食いのポイントにもなります。
<移動平均線>
横ばいもしくは下向きにかわりつつある時
<価格>
移動平均線を上から下に抜いた時
【売りタイミング(2)】
<ポイント>
下降トレンドの中の戻り売りのタイミングとなります。
<移動平均線>
下向きの時
<価格>
大きく下落後、再度上昇して移動平均線を上抜けした時
【売りタイミング(3)】
<ポイント>
下降トレンドの中の戻り売りや売り増しのタイミングとなります。
<移動平均線>
下向きの時
<価格>
一旦上昇するが、移動平均線の手前で再度下落した時
【売りタイミング(4)】
<ポイント>
移動平均線からの乖離率を利用したリバウンド狙いのタイミングになります。
<移動平均線>
上向きの時
<価格>
移動平均線の上に大きく乖離した時
移動平均線の種類
移動平均線は、その計算方法によって3種類にわけることができます。
ここではそれぞれの特徴やメリット・デメリットについて解説いたします。
単純移動平均線(SMA)
単純移動平均線(SMA)とは、ある一定の期間の終値を単純に平均した値で作られている移動平均線です。
「だまし」が出にくく、大きなトレンドの動きを教えてくれるというメリットがある一方、直近の値動きに対して反応が鈍く、市場の動きに遅れを取るというデメリットもあります。
乖離率はこの単純移動平均線をもとに計算された指標になります。
指数平滑移動平均線(EMA)
指数平滑移動平均線(EMA)とは特に直近の終値に比重をおいて作られている移動平均線です。
トレンドの発生には反応が早いというメリットがある一方、直近の価格の比重が高い分「だまし」の可能性が高まるというデメリットがあります。
加重移動平均線(WMA)
加重移動平均線(WMA)とは価格の重みを過去に向かって小さくしている移動平均線です。
緩やかな上昇、下降相場では最も安定しているというメリットがある一方、レンジ相場や急な相場では「だまし」が多く、あまり機能しなくなります。
移動平均線でチャートを味方につける
以上、移動平均線とは何かや使い方を見てきました。
投資やトレードで生活しているプロの方に至るまで多くの人が活用している基本のチャート分析指標「移動平均線」。
相場の大まかな流れを読む以外にも、応用の仕方次第では強力な武器にもなります。
移動平均線を活用して勝率や利益を高めていきましょう。
※利用規約を厳守の上、ご投稿ください。