100年に1度の大変革と言われるガソリン車からEV(電気自動車)へのシフトチェンジ。
世界に対して遅れを取っていると言われていた日本メーカーも、トヨタがEV関連事業へ8兆円を投資すると発表するなど巻き返しの様相を見せています。
国連会議で定められた「2040年までに世界の新車販売の全てをCO2排出ゼロカーに」という目標の実現に向け、ますます投資や開発が加速していくEV関連市場の中で覇権を握るのはどの企業か?
現在注目を集めるEVメーカーのみならず、EVモーターやパワー半導体、EVバッテリーに使われているリチウムイオン電池や全個体電池の開発企業などEVに関連する銘柄を細かく見ていきましょう。
目次
EV関連の有望銘柄を紹介
脱炭素社会の実現に向け、世界では二酸化炭素の排出量が少ないEVにシフトする動きが進んでいます。
「世界の全ての新車販売について、主要市場では2035年、世界全体では2040年までにEVなど二酸化炭素を排出しないゼロエミッション車とすることを目指す」
先日閉幕したCOP26では上記の内容に20を超える国や企業が合意しました。
※COP26:国連気候変動枠組条約第26回締約国会議
日本政府も2035年までに電気自動車の新車販売台数100%の実現を目指すと表明しています。
このようにEVへのシフトチェンジは世界規模で進んでおり、ヨーロッパでは既に自動車市場の約8%をEVが占めています。
しかし、2020年の日本の自動車市場のうちEVのシェアはたったの1%以下と言われ、世界に対し大きな遅れを見せていました。
EVの製造コストが高いことやEVの充電スポットが普及しきっていなかったこと、EVによるCO2削減効果への疑問などが原因との声があります。
そんな日本の自動車メーカーも2021年に入り本腰を入れてEV関連事業への投資に踏み切っています。
2021年12月14日に行われたトヨタ自動車の「バッテリーEV戦略に関する説明会」において、CEOの豊田 章男氏は一挙16車種の新型モデルを公開。
さらに2030年までに30車種のバッテリーEVをグローバルに展開することを示しました。
このように日本を始め世界のEV市場では競争が激化しており、これに伴って市場規模も急速に加速していきます。
今後株式市場でも、ますます注目されるテーマになるでしょう。
そんなEV関連銘柄の中でも特に有望とされている銘柄を日本株、米国株ともにご紹介します。
日本株3選
世界のEV市場に対して取り残された日本のEV展開。先頭に立ってこの巻き返しを図っているのは次の3社です。
- 日産自動車(7201)
- トヨタ自動車(7203)
- 三井ハイテック(6966)
それぞれの企業が注力しているEV関連分野とその将来性を解説します。
日産自動車(7201)
・株価:570.1円
・時価総額:約2兆4千億円
・事業内容:日本の大手自動車メーカー。近年ではハイブリッドカーや電気自動車(EV)等環境に配慮した車づくりを進める。
日産自動車は2021/11/29『Nissan Ambition 2030』を発表し、電気自動車(EV)を中心とした電動化を戦略の中核とする長期ビジョンを示しています。
電動化加速のため、今後5年間で約2兆円を投資し、2030年度までに電気自動車15車種を含む23車種の新型電動車を投入、グローバルの電動車のモデルミックスを50%以上へ拡大。
さらに全固体電池を2028年度に市場投入予定としています。実用化&量産化に成功すればEV市場のゲームチェンジャーになるとも言われる全個体電池については記事の後半で解説します。
トヨタ自動車(7203)
・株価:2,105円
・時価総額:約34兆円
・事業内容:自動車の国内トップメーカー。2020年自動車メーカー販売台数ランキングは世界1位。
トヨタ自動車はEVの普及に対して、製造開発→販売という従来のビジネスモデルから脱却し、開発→販売→中古車販売→電池リサイクルまでを1サイクルに掲げ、他社との協業も行いながら取り組む姿勢を打ち出しています。
電池の耐久性能を高めることで商品力の向上だけでなく中古車販売や電池リユースのビジネスに有効と考えており、先日ノースカロライナ州に約13億ドルを投じ米国内初のEVバッテリー製造拠点の新設を発表しました。
2025年に生産を開始し、最終的には年間で最大120万個の電池を生産するとしています。
また、20年代前半にハイブリッド車に次世代バッテリーの全固体電池を採用して発売する計画や2030年までに新たに30車種のバッテリーEV展開、EV関連市場への8兆円投資など次々と新たな一手を打ち出しています。
EVメーカーとしての覇権を獲るために動き出したとも見て取れます。
三井ハイテック(6966)
・株価:9,000円
・時価総額:3580億円
・事業内容:自動車・家電向けモーターコア大手。超精密金型に強みあり。
三井ハイテックは電気自動車(EV)向けのモーターコアでは世界シェア6割を占めています。
また今後10年で電動車向けモーターコアの年間生産能力を最大で現在の約6倍に引き上げ、2030年には車両2千万台分のモーターコアを生産できる体制を構築するとしています。
今後EVが世界の自動車シェア100%を握る時代が来たとして、それに対応するだけの生産体制を用意しているということですね。
また、半導体向けのリードフレームという部材でもニーズが高く、EV・半導体の注目2分野で活躍する企業です。
米国株3選
米国株からは業界をけん引するリーディングカンパニーやそれに追随する次世代企業、さらにガソリン車で不動の地位を築いたレジェンド企業の新たな挑戦にフォーカスしています。
- テスラ(TSLA)
- ルシード・モータース(LCID)
- フェラーリ(RACE)
テスラ(TSLA)
・株価:1,099.01ドル
・時価総額:1兆560億ドル
・事業内容:電気自動車(EV)メーカー。主に電気自動車(EV)と関連製品の開発・製造・販売を行う。
現時点でテスラの販売台数はポルシェやベンツ、BMWを上回り、競合のエンジン車よりも高度な技術を搭載することでランニングコストと安全性の面でも優れています。
テスラCEOイーロン・マスク氏は「自動運転機能を搭載し、価格を2万5000ドルに抑えた新型EVを2023年までに市場に投入する」と宣言しており、ターゲットを現在の高中流層から一般家庭まで広げ、さらなる販売台数の拡大を見ています。
またEV事業だけでなく、エネルギー貯蔵や太陽光発電事業の売上が順調に伸びており、これらの事業の成長も期待できます。
ルシード・モータース(LCID)
・株価:44.86ドル
・時価総額:722億ドル
・事業内容:電気自動車(EV)メーカー。主に電気自動車、EVパワートレイン、バッテリーシステムの設計・エンジニアリング・製造・販売を行う。
ルシード・モータースはEV、EVパワートレイン、バッテリーシステムの設計、製造、販売を手掛ける会社です。
ルーシッド・モーターズのEVは、驚異的なバッテリー効率と短時間充電を誇り、1度の充電で走る距離(500マイル/約800キロ)はテスラの最長走行距離を100マイル以上も上回っています。
この航続距離は米環境保護庁(EPA)に認定されています。
アメリカのマーケットでは、テスラに追随する次世代のEV企業として注目されています。
フェラーリ(RACE)
・株価:258.53ドル
・時価総額:516億ドル
・事業内容:高級スポーツカーメーカー
EV参入企業は一般向けの自動車メーカーだけではありません。
高級スポーツカーメーカーのフェラーリは2025年に初のEV参入を計画。
モルガン・スタンレーのアナリスト、アダム・ジョナス氏は、2030年にはフェラーリの販売台数の3割超をEVが占めるようになり、2030年までの設備投資額130億ドル(約1兆5000億円)の大半をEV開発関連に充てるのではないかと予想しています。
高級車メーカーは価格決定力が強く、開発コストをかけた分販売価格に上乗せしても顧客が購入してくれやすいため投資対効果が高いと見られます。
EV参入による業績拡大にも期待ができます。
*株価及び時価総額は12/8時点のものになります。
EV関連テーマを解説
電気自動車(EV)とは、エンジンが搭載されておらず、電気を蓄えるバッテリーとモーターで動く車です。
そんなEVに関連するテーマを分解すると5つのプレイヤーに細分化できます。
- 電気自動車(EV)メーカー
- EVモーター関連
- リチウムイオン電池関連
- 全固体電池関連
- パワー半導体関連
それぞれのテーマの内容と該当する日米銘柄をいくつかご紹介します。
※ここでの「米国株」は米国株式市場に上場している銘柄を指しています。
EVメーカー
EVメーカーは、その名の通り電気自動車とその関連製品の開発・製造・販売を行う会社です。
EVテーマの中核を担い、既に市場の注目が集まって株価上昇を始めている銘柄が多いです。
大型株がほとんどのため急激な株価上昇を起こす可能性は低いものの、その分EV事業の拡大とともに安定した右肩上がりのチャートを描いてくれる期待ができます。
【EVメーカー関連の日本株】
・日産自動車(7201)
・ホンダ(7267)
・三菱自動車(7211)
・ソニーグループ(6758):EV事業の新会社設立を発表(2022.1.5)
【EVメーカー関連の米国株】
・リビアン・オートモーティブ(RIVN)
・ゼネラル・モーターズ(GM)
・シャオペン(XPEV)
EVモーター
EVモーターはガソリン車におけるエンジンの役割を果たします。
モーターなくしてEVは走ることができません。
また、ただ走れるだけじゃなく小まめに充電せずとも長距離を安定して走れるEVを設計するためにモーターの小型・軽量化や高効率のモーターが求められます。
さらに一般にEVが普及するためにもEVの販売価格に大きな影響を与えるモーターの低コスト化が鍵となります。
高機能かつ低コストなEVモーターを開発することでどれだけ多くのEVメーカーに採用されるかが鍵を握ります。
【EVモーター関連の日本株】
日本電産(6594)
黒田精工(2049)
デンソー(6902)
【EVモーター関連の米国株】
調査継続中
パワー半導体
パワー半導体とは半導体の中でも高い電圧や大きな電流を制御・変換することに特化しており、モーターの制御に使われています。
パワー半導体の性能によってEVモーターのエネルギー効率が変わります。
エネルギー効率を高めることでEVの課題である航続距離を伸ばすことができるため注目されています。
【パワー半導体関連の日本株】
三菱電機(6503)
富士電機(6504)
ルネサス エレクトロニクス(6793)
【パワー半導体関連の米国株】
アレグロマイクロシステムズ(ALGM)
STマイクロエレクトロニクス(STM)
オン・セミコンダクター(ON)
リチウムイオン電池
リチウムイオン電池とはEVのバッテリーに使われる電池のことで、現在のEV用バッテリーの主流として広く採用されています。
ただし材料であるリチウムやニッケル、コバルトといった金属は2020年代の終わりには不足すると見込まれ、供給を確保するために各社が競っている状況です。
こういった状況を受けて中国の寧徳時代新能源科技(CATL)のように今後はリチウムイオン電池の代替として安価なナトリウムイオン電池の開発を進める企業もあります。
リチウムイオン電池の代替となる新たな動力源やリチウムの使用量を削減する技術が開発できれば、EVのバッテリー市場におけるゲームチェンジャーとなる可能性もあります。
【リチウムイオン電池関連の日本株】
パナソニック(6752)
東邦チタニウム(5727)
旭化成(3407)
【リチウムイオン電池関連の米国株】
フレイ・バッテリー(FREY)
リ・サイクル・ホールディングス(LICY)
ロメオ・パワー(RMO)
全固体電池
全個体電池はリチウムイオン電池をさらに次のステップへと進化させる技術です。
従来より電池に使われている「電解液」という液体をなくし、固体で代替します。
例えば乾電池。放置しておくと液漏れするのは広く知られていることですが、この液漏れで漏れ出してくるのが電解液です。
電池の+と-の間をイオンが活発に動けるようにする役割を持ちます。
この電解液は、実は危険性が高く燃えやすい素材です。中国ではリチウムイオン電池を採用したEVで年間1万件以上の発火事故が起きています。
このようにリチウムイオン電池の熱暴走を防ぐにはそれなりの技術や工夫が必要であり、それを今よりも容易にするのが全個体電池です。
電解質を固形物質で代替し、従来よりも安全かつ大容量のバッテリーを作ることができます。
現在では各国の電池メーカーやEVメーカー直々に開発が進められてる最中です。
量産化には至っていないものの、どの企業が覇権を握るのかこれから明らかになっていく分野です。
【全固体電池関連の日本株】
村田製作所(6981)
TDK(6762)
太陽誘電(6976):
日本電解(5759):トヨタと共同で特許出願
トヨタ自動車(7203):全個体電池を自社開発
【全固体電池関連の米国株】
クアンタムスケープ(QS):ドイツ自動車メーカーのフォルクスワーゲンと提携
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