ダウ理論とは、相場の値動きの傾向から導き出されたチャート分析理論です。
テクニカル分析の原点と言われ、チャートからトレンドを読み取り、これからの値動きがどう推移するのか想定できるようになる相場分析方法として広く知られています。
チャート分析が重要視されるFXにおいて基本となる考え方で、成功しているFXトレーダーが口を揃えて重要性を説いているダウ理論。
基本法則をおさえ、チャートを根拠としたエントリー、利確・損切り、利益の伸ばし方ができるよう、実践で使える手法も交えて学んでいきましょう。
目次
ダウ理論とは
ダウ理論とは米国の金融ジャーナリストであるチャールズ・ダウ氏によって提唱された値動きの傾向(トレンド)を評価するための理論で、6つの法則から構成されています。
チャールズ・ダウ氏とは、投資の世界で多大な功績を遺した人物です。
米国で初めて体系的なチャート分析理論を構築した人物として知られるほか、国際的な影響力を持つ日刊経済新聞「ウォール・ストリート・ジャーナル」を創刊しました。
また、今では当たり前のように経済ニュースで耳にする米国の株式指数「ダウ平均株価」も彼によって考案されたものです。
そんなダウ氏の名を冠したダウ理論は「ダウ理論なくして相場は語れない」と言われるほど重要なテクニカル(チャート)分析手法。
株価だけでなくFXや仮想通貨などチャートを表示できる投資対象すべてに活用できる性質が認められ、100年以上たった現在でも多くのマーケット関係者から支持を得ています。
ダウ理論の6つの基本法則
すべてのテクニカル分析の基礎として、現在でも多くの投資家に支持されているダウ理論は、6つの基本法則で構成されています。
- 平均はすべての事象を織り込む
- トレンドは3種類ある
- 主要トレンドは3段階からなる
- 平均は相互に確認されなければならない
- トレンドは出来高でも確認されなければならない
- トレンドは明確な転換シグナルが発生するまで継続する
ここではそのダウ理論を構成する6つの基本法則について解説します。
平均はすべての事象を織り込む
1つ目の基本原則は「平均はすべての事象を織り込む」です。
これは、企業の業績や経済状況、経済指標や金融政策の方向性、政治的なイベント、自然災害などあらゆるファンダメンタルズの情報はすべて市場価格に反映されている。という考え方です。
下図のようにチャート上の価格推移はさまざまな情勢を織り込んで推移しています。
出典:TradingView「米ドル/円チャート」より
ファンダメンタルズの情報は既に価格に織り込まれているため、ファンダメンタルでは将来の価格予想はできないとしています。
逆に、今後価格が上がるか下がるかの予想は、チャートの値動きだけで予測可能としています。
トレンドは3種類ある
2つ目の基本原則は「トレンドは3種類ある」です。
トレンドには上昇トレンドと下降トレンドがありますが、それぞれのトレンドの期間により「短期」「中期」「長期」と3つに分けることができます。
短期:3週間未満
中期:3週間から3ケ月
長期:1年から数年
この2つ目の基本原則では、トレンドは一方向のみに動くのではなく、必ず調整を伴いトレンド方向に動くということを表しています。
具体的には、長期トレンドは主要トレンドとも言われ、方向感を示します。
この主要トレンドの中で、複数の中期トレンドや短期トレンドが組み合わさり、調整局面をつくりながら上下に動いているということです。
出典:TradingView「米ドル/円チャート」より
出典:TradingView「米ドル/円チャート」より
出典:TradingView「米ドル/円チャート」より
トレード戦略を立てる際には、自分がどの時間軸(短期、中期、長期)のトレンドでトレードをするのかを明確に決めておく必要があります。
主要トレンドは3段階からなる
3つ目の基本原則は「主要トレンドは3段階からなる」です。
ダウ理論では、主要トレンドは買い手や売り手の動向によって、3段階に分かれるとしています。
第一段階:先行期
第二段階:追随期
第三段階:利食い期
出典:TradingView「米ドル/円チャート」より
第一段階:先行期
大衆投資家が悲観的に相場をとらえている低迷期に、機関投資家やプロ投資家などが大量に買い注文を入れて仕込んでいる時期で、価格は緩やかに上昇をしはじめます。
このタイミングではまだ下降トレンドの最中のため、一般の投資家がここで買いの判断の行うのは難しいとされています。
第二段階:追随期
ファンダメンタルズの買い要素など上昇相場の雰囲気が出てきて、多数の投資家が参入してきます。
今まで以上に出来高は大きくなり、価格も急伸します。
この時期には上手い一般投資家も買いを入れてきて、上昇トレンドが形成されます。
第三段階:利食い期
トレンドの最終時期です。
この時期は誰がどう見ても買い相場であるため、さらに多くの一般投資家が買いで参入してきます。
しかし先行期で買い始めた人が利益を確定しはじめるため、ここから相場は下がっていきます。
この時期に買いで入った投資家は高値掴みとなり、その後の急落で大きな損失を被ることになります。
これらのトレンドの3段階を理解し、テクニカル分析で追随期でのエントリーポイントを探すことは、トレードの成功率をアップさせることにつながるでしょう。
移動平均線を用いて各トレンドの段階ごとのエントリーポイントを判断することもできます。
平均は相互に確認されなければならない
4つ目の基本原則は「平均は相互に確認されなければならない」です。
これは、相場は一つの指標だけでなく、複数の指標の相関性を確認し、それらが同じ方向性を示すことでトレンドに確信が持てるということです。
このダウ理論が述べられた時「平均」とは、工業株平均と鉄道株平均を指していました。
工業関係の業績が良くなれば、その物資を運ぶ鉄道関係の業績も良くなるはずで、もしどちらかの業績がよくないままであれば、そこで出ている上昇トレンドは本当のトレンドとは言えないであろうという考え方になります。
FXに当てはめると例えばクロスの通貨ペアのすべてが上昇トレンドであれば、円価格は下降トレンド(=円安)に進んでいると判断できます。
出典:TradingView「米ドル/円チャート」より
トレンドは出来高でも確認されなければならない
5つ目の基本原則は「トレンドは出来高でも確認されなければならない」です。
ダウ理論では、トレンドを判断するための重要な要素として出来高をあげています。
これは本格的なトレンドが発生する際には、出来高も大きくなるというものです。
出典:TradingView「米ドル/円チャート」より
出来高が小さい中での上昇は、価格を動かそうと過度に積極的な買い手がいたり、流動性の低さが引き起こした価格のブレの可能性が考えられます。
このような状況で価格が上がったとしても、上昇トレンドの信憑性は低いといえるでしょう。
トレンドは明確な転換シグナルが発生するまで継続する
6つ目の基本原則は「トレンドは明確な転換シグナルが発生するまで継続する」です。
これはダウ理論の中でも最も重要、かつ最もトレードに応用しやすい理論と言われています。
ダウ理論では、上昇トレンドとは「高値と安値がそれぞれ切り上がること」、下降トレンドとは「高値と安値がそれぞれ切り下がること」と定義されています。
その上で、ひとたび上昇トレンドもしくは下降トレンドが開始されると、その動きは明白な転換シグナルが発生するまで継続するという性質があります。
この明白な転換シグナルとは、先に定義づけた上昇トレンドの「高値と安値それぞれの切り上げ」と下降トレンドの「高値と安値それぞれの切り下げ」となります。
出典:TradingView「米ドル/円チャート」より
ダウ理論を知っておくことで役立つタイミング
このダウ理論を理解していると、様々なトレードのタイミングで役に立ちます。
トレンドの流れを読むとき
エントリーポイントを探る時、まず今のトレンドが何なのかを読むことから始まります。
ダウ理論では「トレンドは3種類ある」とあるように、まず「短期」「中期」「長期」それぞれの視点でトレンドの確認が必要です。
トレンドは時間軸が長ければ長いほど、強くなるという性質があります。
チャートの時間軸を1分足、4時間足、日足など変えてみながら、今は上昇下降どちらのトレンドか、強いトレンドはどちらなのかを確認しましょう。
トレンドの切り替わりを読むとき
これはダウ理論の中でも最も重要と言われているものに、「トレンドは明確な転換シグナルが発生するまで継続する」というものがあります。
これはトレンドの切り替えわりを読むことで、その先に起こる価格の方向性を予測するほか、建玉の決済のタイミングを計るのにも役立ちます。
エントリーや決済のタイミングを計るとき
ダウ理論を理解し、応用することで、エントリーや決済のタイミングを計ることもできます。
具体的には、中長期トレンドで一方方向に動いている時に、その中での押し目や戻りでエントリーし、トレンドの切り替わりが確認できたら決済をする。という方法です。
ダウ理論は世界中のトレーダーに重要視されている、世界共通認識のトレード理論です。
そのダウ理論で長期トレンドや押し目や戻り、トレンドの切り替わりを確認した上でトレードを行うことは、根拠のない裁量トレードにくらべ、各段に勝率が上がるといえるでしょう。
ダウ理論を活用したFX手法
一般的にトレンドフォローの売買戦略が王道とされていますが、その優位性の根拠となっているのが、ダウ理論の6つ目の基本原則「トレンドは明確な転換シグナルが発生するまで継続する」です。
ここではダウ理論を活用したトレンド転換の後を狙った順張りトレードの方法を解説します。
トレンド転換点でエントリー
まずは現在のトレンドの報告を確認します。
下図のチャートでは1時間足レベルで下降トレンドを形成していました。
その後、安値の切り下がりが停滞し、高値を切り上げるローソク足が出てきます。
出典:TradingView「米ドル/円チャート」より
次に高値を切り上げた後、直近高値まで価格を戻したところを狙ってエントリーします。
上昇トレンド始まりの合図です。
トレンド継続でピラミッティング
上昇トレンドを継続する中で、一時押し目をつくるタイミングがあります。
次に押し目をつけてから直近高値を上回るタイミングはポジションを追加するチャンスです。
ポジション保有中にさらにポジションを追加することをピラミッティングと言います。
出典:TradingView「米ドル/円チャート」より
厳密には高値を上抜けたあと一時的に直近高値まで値を戻して再反発するタイミングを狙いましょう。
この現象をロールリバーサルやレジサポ転換と言います。
トレンド転換点で決済
決済タイミングは明確にトレンドが転換する時です。
上昇トレンドに乗ってトレードしている場合、安値が切り下がってローソク足が確定したら決済しましょう。
出典:TradingView「米ドル/円チャート」より
この後下降トレンドに転換すると見られ、今度は売り(ショート)で稼ぐこともできます。
ダウ理論と合わせて知っておきたい相場の原則
ダウ理論と合わせて知っておくことで、より相場や大衆心理への理解が深まり、トレードがやりやすくなる相場の原則をご紹介します。
グランビルの法則
グランビルの法則とは、米国のチャート分析家ジョセフ・E・グランビル氏が考案した、移動平均線と株価の乖離の仕方や方向性から株価の先行きを判断する投資理論です。
具体的には、価格と移動平均線の組み合わせや位置によって、買いが4通り、売りが4通りと8つの売買パターンの法則で成り立っています。
値動きの傾向(トレンド)をダウ理論で分析し、実際の投資タイミングをグランビルの法則を使って確認するというように組み合わせて使うことで、より効率的な投資が可能となります。
エリオット波動
エリオット波動とは、米国の経済哲学者であるラルフ・ネルソン・エリオット氏が提唱した株式投資についてのテクニカル理論で、相場の波のリズムを理論化したものです。
エリオット波動では、ひとつの相場は上昇5波と下降3波で構成される。としています。
また3原則としてチャートパターンを定義づけており、その条件がそろったらエリオット波動の理論に従って、その後の値動きを予想しやすくなります。
このエリオット波動を利用すると、チャート上で値動きがどのように変化していくのか、容易に予想できるようになります。
ダウ理論が学べる本
ダウ理論は多くのトレーダーが参考にしており、ゆえにダウ理論通りに相場が動くことも珍しくありません。
テクニカル分析において、非常に重要なトレード分析の方法ですので、どの分析方法を学ぶか迷っている方は、まずはこのダウ理論を学ぶことをおすすめします。
ここでは、ダウ理論を学ぶのにおすすめの書籍を3冊ご紹介します。
世界一やさしい FXの教科書 1年生
著者:堀 祐士
本書はFX初心者に対し、FXで勝てるようになるための「テクニック」と「メンタル」を身につけられるよう、投資の基本姿勢からエントリーするまでの流れを具体的に説明。
資金管理やメンタル、リスクコントロールについてもロジカルに解説しています。
テクニカルでは、ボリンジャーバンドやダウ理論について、初心者にもわかりやすく解説されており、今まで他の入門書で難しく感じた人にはおすすめの良書です。
ずっと使えるFXチャート分析の基本
著者:田向 宏行
本書では、勝つためにはテクニカル指標よりまず、FXの本質である「値動き」を理解することが大切としています。
ローソク足チャートからの情報の読み取り方など論理的に説明しており、また具体的な事例が数多く記載されているので、実際の取引の参考にもなります。
また解説にチャートがふんだんに使われているので、ビジュアルでイメージしやすい内容となっています。
本書を読み、理解することで自然とダウ理論の基礎が身につきます。
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先物市場のテクニカル分析
著者:ジョン J.マーフィー
本書は、40刷を重ねトレーダーたちから支持されるロングセラーです。
テクニカル分析の基本理念、チャートの描き方をはじめ、チャートパターン、出来高と建玉、移動平均、オシレーター、ポイント・アンド・フィギュア・チャート、エリオット・ウェーブ、サイクル理論等、チャート分析に必要なノウハウをわかりやすく解説しています。
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